今回はセールスパーソンに必須の心理テクニックをセールスの天才ジョルダン・ベルフォート氏から学びたいと思います。
まず初めにジョルダン・ベルフォート氏を知らない人のために紹介しておくと、ジョルダン・ベルフォート氏はアメリカのトップ1%の資産家たちに株を売って大金持ちになっただけではなく、多くの若者に彼のセールスのやり方「ストレートラインシステム」を教えて、本人の言葉を借りると、チューインガムを噛みながらではまともに歩くことも出来ない低能な若者を次々と優秀なセールスマンに変え、裕福な若者に変えていきました。
ジョルダン・ベルフォート氏をモデルにした『ウルフオブウォールストリート』という映画も製作されました。
映画の最後では諸々の罪で収監され、檻から出た後、ニュージーランドでセールスのセミナーをやるところで、映画は終わるのですが、現在彼はそのセールス手法をオンラインスクールで公開しており、私も合計100万円以上する彼のオンラインスクールを全て受講しました。
今回はその中で学んだどんな時でも確信度、自信を瞬時に100%までもっていく方法をお伝えします。
そもそも何故確信度が必要か?
「セールスとは信念の移譲である」
というのは使い古された言葉ですが、人がものを買うか買わないかを決めるのは商品、会社、セールスパーソンに対する確信度によって決まります。
要はこの商品を買った方が良い、この会社から買った方が良い、この人から買った方が良いという確信度の総合で決まるということです。
この確信度を伝えるための技術としてジョルダン・ベルフォート氏は直線説得法という手法を使っています。私も直線説得法を使っています。
ですが、直線説得法はセールスパーソンが持っている確信度を伝えるための技術であって、確信度そのものはセールスパーソンから来るのです。
ところが、しばらく売れない時期が続くとしょぼくれてしまって、確信度合いが下がり、いくら自分の確信度を上手く相手に伝えても、そもそもの確信度合いが低いから売れないということになります。
だからこそ、確信度合いを常に高く維持しておかなければいけないのです。
また、これは売れる売れない以前の問題として、私はセールスパーソンの仕事の一つは人を元気づけることだと思っています。
残念ながら、多くの人は理想の人生を送っている訳ではありません。従って、心の中が明るい気持ちで満たされている訳ではありません。セールスパーソンの仕事は出来るだけ多くの人に接することもであるので、そういう人たちに多く接することになります。
ですから、そういった人たちに一瞬でも良いから明るい気持ちにさせることが一つの仕事です。人は明るい人と一緒にいると自分も明るくなるものです。元気な人と一緒にいると自分も元気になるものです。
東洋の言葉で言うところの陽気です。
昔から陽気の発するところ金石また透ると言いますが、自分から陽気を発し、周りの人に好影響を与えるのがセールスパーソンの最低限の仕事です。
それでは、早速その具体的な方法論に入っていきましょう。
アンカーとトリガー
さて、突然ですが、あなたはアンカーとトリガーという言葉を聞いたことがありますか?
理科や生物の教科書に出てくるパブロフの犬の実験といった方が分かりやすいかもしれません。パブロフの犬の実験は犬に毎回ベルの音を聞かせてからえさを与えると、やがてえさを与えなくてもベルの音を聞かせただけでよだれが出るようになるという、条件反射の存在を確かめた実験です。
この実験ではベルの音がトリガー、よだれが出るという状態がアンカーです。要するに、ある生理学的な状態や心理的な状態を引き起こす引き金(英語でトリガー)となるものがトリガー、それによって引き出されるある状態がアンカーです。
実は多くのスポーツ選手がこのアンカーとトリガーを意識してかせざるか、有効に使っています。スポーツにはそれぞれ、そのスポーツに適した心理状態というものがあります。
例えば、ゴルフや野球、射撃の場合、一瞬の一点集中が求められます。生理学的な状態というよりも、心理的な集中が求められます。
重量挙げやスプリンターの場合は、短時間で最大限肉体の力を出し切る、一種のトランス状態が求められます。スプリンターが10秒間や20秒間の間に発揮している力というのは、普通の人が考えている以上のものです。
例えば、黄金期の広岡達郎監督率いる西武ライオンズでは若手投手はキャンプ中、毎日のように100mを100本やらされたとのことですが、本当に全力でやれば10本もやれません。数時間の休憩を挟んでも一日に5本程度が限度なのではないでしょうか?
西武ライオンズの若手選手達だって、手抜きをしているという自覚はないと思います。ただ、スプリンター達は瞬間的にそこまでの集中力まであげて、普段は出せない筋出力を発揮しているので、一日に10本なんてとんでもないということになるのです。
マラソンの場合は、最低でも2時間ちょっともたせる必要があります。そして、マラソンで重要なのは如何に力を使わずに集団につくかということです。これもその人のリズムを刻んで極力体の力を抜くということが大切になります。これはこれで、独特の精神状態に入る必要があります。日本記録保持者といえども、朝起きて歯を磨くようにレースの走りをすることは出来ません。
このようにスポーツ選手はそれぞれ適した心理的な状態や生理学的な状態に持っていく必要があるので、それぞれのルーティンを持っていることがとても多いです。よく言われる平常心というのも、普段のルーティンをこなすことでトリガーとアンカーの関係から、望ましい心理状態、生理学的状態を作るということだと思います。
代表的なもので言うと、イチロー選手がバットをぐるりと回して、軽く右腕の袖に触れる動きや、ラグビーの五郎丸選手がボールをける前にやっていたポーズなどがそうだと思います。
多くの選手はこうしたルーティンはそれほど深く意識せずに、なんとなくやっていることが多いのですが、この原理を意識的に使えば、良い時の状態を出しやすくなります。これは単純な話で、ここではプロ野球選手を例にとりたいと思います。年間500打席あるとすると、そのうちの50打席は最高の集中力が発揮できているとします。
そして、50打席は自分でも集中できていなかったなと感じているとします。意識的に最高に集中出来た時の打席をアンカーに、そして何らかの動作(例えば一度大きく息を吐いてバッティンググローブのマジックテープを止めなおす)をトリガーにすることで、最高に集中できた打席が年間100打席に増え、集中できなかった打席が年間5打席に減ったとします。肉体的な能力や技術が同じならこれだけで打率が2-3分上がると思いませんか?
場合によっては、高い集中力を維持することで練習量を減らすことも可能かもしれません。プロ野球の中継ぎ、抑えの投手なんかはいつ来るか分からない登板に備えて、良い状態を維持しないといけないのですが、あるピッチャーは瞬時に高い集中状態に持っていけるように訓練したため、ブルペンで投げる数を減らすことが出来たと語っています。
要するに、アンカーとトリガーの関係を使えば、より高い確率で、自分の好きな時に好きな心理状態や身体状態に持っていけるようになるということです。
ジョルダン・ベルフォートのアンカリング
ここからいよいよ本題のジョルダン・ベルフォートのアンカリング方法について解説していきたいと思いますが、ジョルダン・ベルフォートがアンカーにしたのは「確信」です。彼は主に電話でのセールスだったのですが、電話越しとは言えセールスマンが自分の商品や会社に確信を持っているのか、それとも粗悪な商品を仕事だから売っているのかは何となく伝わりますよね?
逆に言えば、自分の確信の度合いを高めれば、より高確率で自分の薦める商品が売れると思いませんか?
そこで、ジョルダンはいつでも最高の確信度合いを出せるように、トリガーとアンカーの関係を使いました。ジョルダンのトリガーとアンカーの技術は2ステップです。
ステップ1 アンカーの状態とベースとなる記憶を決める
ここでは自分がアンカリングしたい心理的状態を決めます。セールスパーソンの確信度合いが最も高まる時は一体いつでしょうか?
言うまでもなく、契約が決まった瞬間です。契約が決まった瞬間はジョルダン・ベルフォート氏の言葉を借りるならば「世界の王となる瞬間」です。過去に最もタフな商談を締結させた瞬間の記憶を鮮明に思い出します。
その時見ていたもの、その時聞いていたもの、その時感じていたもの、その時着ていたもの、その時の感情(情動記憶)も含めて全て鮮明に思い描きます。
ステップ2 トリガーとなる匂いを嗅ぐ
鮮明に思い描くことが出来れば、あとは特定の匂いを嗅ぐだけです。このステップ1と2を繰り返せば繰り返すほど、条件反射として定着し、この匂いを嗅ぐだけで、いつでも最高の確信状態にもっていくことが可能になります。
そして、この匂いを何にするのかということですが、条件は下記の二つです。
・特定の記憶と脳内で結びつくだけの強く刺激的な香りでありながら、不快感を引き起こさないかおり。
・持ち運び可能で、いつでもポケットから取り出せて周囲の人に不快感を抱かせない程度の匂いの強さ。
この条件を満たすものでジョルダンが選んだものがBoomboomというスティック型のエッセンシャルオイルです。キャップを取り外して鼻腔に差し込み、息を吸い込むだけなのでいつでもポケットから取り出せて周りの人にはその匂いは伝わりません。本来は気分転換や集中したいときの為に売られている商品で日本のアマゾンにもありました。
ジョルダン・ベルフォート自身のアンカリング経験
ジョルダン・ベルフォート氏はこのアンカリング方法を考え出してから、半年間何度も確信状態のアンカリングを試みました。ところが、何度やっても上手くいきません。以下がその様子です。
「問題は私が選んだ記憶にあった。私はホワイトボードに直線説得法(彼のセールス方法)を書きながら説明し、劇的に若手セールスマン達を変えたあの火曜日の夜以上に強い確信を持った記憶を探した。そう第二章で話したあの夜のことだ。私の心の目が開かれ、ストレートラインシステムを考え出したあの夜のことだ。しかし、あの夜以上に私が確信を持ったことなどない。
しかし、ショックなことにアンカーをセットしようとしても上手くいかなかった。何度もやってみたがやはり上手くいかない。何度も何度もやってみたが、何の結果も出なかった」 引用:Jordan Belfort著 『Way of the Wolf』訳筆者
最終的にジョルダンがアンカリングに成功したのは、自分でもタフだと思える契約の取引を成功させた後でした。これは単純ですが、忘れてはいけない事実だと思います。どんな心理的なテクニックを駆使しても、最もリアリティが強いのはこの現実世界です。トリガーとアンカーのテクニックを使ってより良い成果を挙げる、そしてより良い成果を挙げたらそれをベースにより強いアンカリングを行う、この繰り返しが大切だと思います。
心理学的なテクニックが上手くいかない?
心理学的なテクニックが上手くいかない人は、逆説的ですが、心理学的なテクニックに期待し過ぎている傾向があります。心理学的なテクニックもある程度反復練習が必要なのですが、心理学的なテクニックに過剰な期待をしている人はスーパーマンのような力を期待して練習するので、当然全くできません。出来ないから、モチベーションも下がって、反復しない。反復しないから出来ないという悪循環になって最終的に辞めてしまうのです。
残念ながら、心理学的なテクニックを駆使すればいつでも「ボールが止まって見える」訳ではありません。このことは強調し過ぎても強調し過ぎることはないので、もう一度説明しておきます。
プロ野球で言えば、年間500打席で最高に集中できた打席が50打席、自分でも集中できなかったと思う打席が50打席あったとすると、心理学的なテクニックを使えば、年間500打席で最高の集中力が発揮できるようになるわけではありません。最高に集中できる打席を年間100打席に増やし、集中できなかった打席を年間5打席に減らすことが心理学的なテクニックです。
しかしながら、懸命な読者諸兄の方々にはこの差が如何に大きなものかお分かりいただけると思います。これだけ集中の度合いが変われば打率2割7分の打者が打率3割になります。打率2割7分が打率3割になれば、給料は数千万円跳ね上がります。
セールスも同じです。今まで300人に1人声をかけて1件の成約をとっていたものが、このテクニックを使えば、10人に1件のペースで売れるようになる訳ではありません。しかし、もしかしたら、100人に1人の割合で1件の成約が取れるようになるかもしれません。
単純計算で収入が3倍になります。あるいは今まで客単価1万円だったのが、2万円になるかもしれません。やはり、収入が2倍になる訳です。サラリーマンの給料はそんなに急には上がりませんが、起業家の収入は3年で5倍、10倍になることも普通にありえます。そのあたりも起業の魅力かもしれません。
私の場合もこの3年半で8倍近くになっています。その根本にあったのは、日本の景気が良くなったからでも、黙ってても商品が良ければ勝手に売れるようになるからでもなく、私自身が自分自身と自分の作った商品を信じることから始まったのです。
自分と自分の商品と自分の会社を信じること、その確信をきちんとテクニックにまで落とし込んで形にしてしまったのがこのテクニックだと思って頂けると分かりやすいかと思います。是非使ってみて下さい。
追伸
今回はジョルダン・ベルフォートの心理学テクニックについて書きましたが、文中に出てくる直線説得法に興味を持たれた方も多いかと思います。年収一億円でも充分凄いですが、週に1億円を稼ぎ、高校中退した16歳の若者までミリオネアに変えたのが、直線説得法です。
ジョルダン・ベルフォートは「あなたがセールスマンじゃなかったとしても人生とはセールスだ。自分の考えを売り、自分のコンセプトを売り、自分の商品を売り、親は子供にお風呂に入ることや勉強することの重要性を売り、先生は生徒に教育の重要性を売り、宗教家はイエス・キリストやモハメドや釈迦の実存を売る。
我々は全員、人生のある時点で、将来の上司、部下、ビジネスパートナーに自分を売り込み、初めてのデートという契約を勝ち取らなければいけない。要するに、セールスとは人生の全てに応用可能なのだ」と言っています。
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