1989年アメリカにオークモントストラットンという株を売る会社が設立されました。創設者のジョルダン・ベルフォート氏は8歳のころから新聞売りをはじめ、10代でアイスクリーム売り、その後シーフード販売、そしてオークモントストラットンでは株を売り、その生涯の大半をセールスパーソンとして過ごしていました。
彼の言葉を借りるなら「母親の子宮にいる時からセールスパーソンで、エスキモーに氷も売れるし、アラブ人に石油も売れる生まれつきのセールスパーソン」らしいです。
そんなジョルダン・ベルフォート氏ですが、やはりご本人の言葉を借りると「私が偉大なセールスパーソンであることに疑問の余地はないが、その10倍はセールストレーナーとしての私の方が優れている」とのことでした。
要するに、自分でも売れるけど、営業未経験者を凄腕セールスパーソンに変えることが出来るということです。
そんなジョルダン・ベルフォート氏はその言葉通り千人を超えるワールドクラスのセールスパーソンを育て上げ、オークモントストラットン社をアメリカで最も急成長する会社にしたのですが、実はそれにはいくつかのきっかけがあります。
先ずオークモントストラットン社が急激に伸び始めたのは、5ドルの安い株をアメリカのトップ1%のお金持ち達に売るという誰も試みたことのないアイディアを実行に移したからです。
これによって、彼自身と彼の右腕のダニー・ポラッシュは大金持ちになりました。一度は一回の取引で72000ドル(約800万円、当時のレートでは約2500万円)も稼ぐという荒稼ぎぶりでした。
ただ、これはダニーとジョルダン・ベルフォート氏が大金持ちになるきっかけではありましたが、オークモントストラットン社が大きくなるきっかけではありませんでした。
当時のオークモントストラットン社はダニー・ポラッシュ氏とジョルダン・ベルフォート氏以外に12人のセールスパーソンがいたそうなのですが、この12人はアメリカのトップ1%に5ドルの株を売るという方針に切り替えてから1か月間ノーセールだったそうです。
この12人もセールスの腕が決して悪かった訳ではありません。この新しいアイディアに挑戦する前は平均で月に12000ドル(約130万円)を稼いでいた凄腕セールスパーソンたちです。念のために書いておきますが、これは売り上げではなく稼ぎです。
そんな彼らもアメリカのトップ1%に5ドルの株を売ることは出来ませんでした。しかも、一か月もです。ジョルダン・ベルフォート氏を含めて、この12人のメンバーのフラストレーションはピークに達していました。
ジョルダン・ベルフォート氏は月に130万円ほど稼いでいた他のメンバーの収入が0になったことに責任を感じてもいました。そこである火曜日の夜、ジョルダン・ベルフォート氏は全員を集めてこう言いました。
「今夜は徹夜する覚悟も出来ている。どうして、君たちが売れないのかを教えてほしい。5ドルの株をトップ1%のお金持ちに売るという方針に切り替えてから、俺も収入が上がったし、ダニーも売れている、そして君たちにもできることを知っている。にもかかわらず、君たちはまだ売れない。何故なのか教えてくれ」
そうすると、沈黙がしばらく続いた後、次のような意見が出てきたそうです。
「反論が多すぎる」
「同じく反論が多すぎる。お金持ちに売るのはやめたい」
「同じく反論が多すぎる。千個は反論される」
そこでジョルダン・ベルフォート氏は「いいだろう。その千個の反論を全て俺に教えてくれ。その全てに対する対処法を教えてやろう」と言い放ちました。そこから本当に千個の反論を順にホワイトボードに書いていったそうです。主なものを挙げると「折り返し連絡します」「もう少し考えさせてください」「今お金がなくて」「今は時期が悪い」「奥さんと相談させてください」などなどです。
そうして、1000個の反論を挙げさせましたが、その1000個は大きく分けると14個の反論に分類できたそうです。
そして、その14個の反論のうち唯一本当の理由である可能性があるのは「今お金がない」だけで、後は買い手の逃げ口上に過ぎないということが判明しました。誤解の無いように、書いておくと見込み客は買いたくないからそういっているのではありません。
何故なら、買いたくない、或いは興味がない人にオークモントストラットン社はプレゼンをするほど暇ではないからです。興味があって、相手のニーズに答える株を紹介していました。ですから、見込み客の方も「プレゼンの内容に嘘がないなら買いたい」と思っている訳です。
ところが、「この株をこの人から、そしてこの会社から買った方が良い」という確信が買うという決断を下すほどまでに高まっていないから最後に逃げられるのです。
「もう少し考えさせてください。そうすればもう少し確信が高まるかもしれません」「資料を送ってください。そうすれば、もう少し確信が高まるかもしれません」「妻と相談させてください。そうすれば、もう少し確信が高まるかもしれません」「今は時期が悪い。時期が良くなれば、今の確信度が高くても買うかもしれません」要するに、そういうことなのです。
では、何故見込み客の確信度合いが高まらないのでしょうか?
セールスパーソンの説明の仕方が悪いのでしょうか?
部分的にはそうです。セールスパーソンの説明の仕方が悪いから、見込み客の方に「買った方が良い」という確信がないという可能性は大いにあります。ただ、このケースではもっと他のところに原因があるでしょう。
何故なら売れなかった12人もダニー・ポラッシュ氏もジョルダン・ベルフォート氏も全く同じセールススクリプト(営業台本)を使っていたからです。ではなぜなのか?
理由はこういうことです。人間のメカニズムというのは0から100にいきなり移行することは出来ないのです。勉強でも予習と復習が大切という話を聞きませんか?
実際に、人間というのは大天才でもない限り一回聞いただけでは覚えられません。私の周りには東大卒の人こそいませんが、京大卒の人は何人かいます。
京大生ともなると頭が良くて、一回聞いただけで覚えられるのだろうと思われるかもしれませんが、実際には全然そんなことはなくてほとんどの京大生は忘却曲線を理解し、短期記憶が失われる前に何度も復習をして、そして長期記憶へと定着させているのです。京大生ですらそうなのですから、ほとんどの人がそうでしょう。
商品販売も同じです。普通は一回説明されて「買いますか?」と聞かれても、まだよく分からないのです。では、ここで何をするか?
再プレゼンをしないといけないのです。例えば、「もう少し考えさせてください」という相手に「今どのようなところでお悩みでしょうか?」と聞いたところで本人もよく分かっていないのですから、無意味なんです。
勉強で言えば、全然頭に入っていない生徒に「どこが分からないかな?」と聞くようなものです。子供なら素直に「全部分かりません」と言ってくれるかもしれませんが、大人になって、それも商売の場では、たった今丁寧に説明してくれた人に向かって「全部分かりません」とは言えません。
勿論、「あなたのことまだよく知らないので買いません」とも言いにくいです。その結果として、「もう少し考えさせてください」「妻と相談させてください」という逃げ口上をとっさに思いつくわけです。
ちなみにですが、これらは見込み客の方も無意識のうちにこのような判断に至っているケースがほとんどです。
ですから、ここで簡単に引き下がって「ではしっかりとお考え下さい」と返すのは、「先生全然分かりません」という生徒に向かって「じゃあ、家に帰ってゆっくり一人で考えてね。先生は忙しいからじゃあ」というのと同じくらい無責任です。
中には頭の良い子がいて、家に帰って一人で落ち着いて考えたら頭が整理して理解できるようになるかもしれません。これがごく一部の後から折り返し電話を頂いて「買います」という返事をくれる見込み客です。ただ、これは少なくとも私の商売経験上ありません。0です。一回もありません。
ですから、再プレゼンをすることが大切なのです。おそらくジョルダン・ベルフォート氏はこれが自身の経験から誰からも教わらなくとも自然と出来ていたのでしょう。ダニー・ポラッシュ氏はジョルダン・ベルフォート氏を誰よりも近くで見ていたので、自然と出来たのかもしれません。
そして、二人とも自然に出来ていたので、他の12人に教えるという発想がなかったのでしょう。
そこで、ジョルダン・ベルフォート氏は再プレゼンの仕方を体系的に他の12人に教えました。その後の結果は映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」の通りです。まだこの映画をご覧になったことがない方はURLを貼っておきますので、予告編だけでもご覧ください。そのすごさがお分かりいただけると思います。
ちなみにジョルダン・ベルフォート氏はこの買うか買わないかの瀬戸際にいる人のことを「Person on the fence(フェンスの上にいる人)」と呼びます。要するに、どちらにも簡単に傾く人のことです。
そして、セールスパーソンが高収入なのは、このフェンスの上にいる人を成約へと導くことが出来るからだとも語ります。これは今の話からも分かりますよね。フェンスの上にいる人をクロージングできるかどうかで、収入が0なのか大金持ちかのどちらかになるのですから。
少なくとも理屈の上では、フェンスの上にいる人をクロージングできなければ、オークモントストラットン社の発展もなければ、レオナルドディカプリオ主演の大ヒット映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」も誕生しなかったわけです。
ちなみにですが、私は現在オンライン販売しかしていませんが、色々な工夫を凝らしてこのフェンスの上にいる人をクロージングするようにしています。私がオンラインで一対多数の商品販売をするようになった時、最も頭を悩ませたのがこのフェンスの上にいる人をクロージングすることでした。これが出来ないと、それこそ文字通り0セールスになりかねないのです。
では、どのようにフェンスの上にいる人をオンラインでクロージングしたのか?
その秘密は「直線説得法マスタープログラム」という34本合わせて総再生時間17時間のオンライン講座の中で徹底解説しています。もちろん、先ず一対一のセールスでフェンスの上にいる人をクロージングできるというのが大前提ですから、このやり方についても詳しく解説しています。詳細は下記のURLより今すぐご確認ください。
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